「放送受信で味わった感動は？」というと、どのようなことを思い出されるでしょうか。 今回は私のそうした思い出について書かせて頂きます。比較的「ありがち」なパターンですので、共感を持って頂ける方も多いのではないかと思います。 初めての海外放送受信 　小学校３年生の頃でした。まだ当時はＢＣＬなどという言葉はありませんでした。結構子供の頃からラジオ好きで、親からもらったソニーのポケットラジオで中波を良く聞いていました。こんな小さな箱から音が聞こえてくることが不思議で、ラジオ放送の原理が書かれた本を図書館で探して読んだりしていたことを覚えています。 ある日の夜、いつものようにラジオのダイヤルを廻していた時、聞き慣れない雰囲気の放送が入ってきました。日本語ではありましたが、何か違和感を感じる放送内容に興味をひかれ、そのまま聞き続けていました。そうすると局名アナウンス。「こちらは北京放送局です」．．．一瞬耳を疑いました。この時点では、中波で外国の放送が受信出来るなどとは考えもしませんでした。そうしてあっという間に、私は中波で聞こえるこの日本語放送に夢中になってしまいました。当時の北京放送は現在のようにくだけた内容ではなく、子供にとって面白くは無かったはずですが、異国の放送が聞こえるというだけで充分楽しく、夜しか聞こえないというのも逆に魅力的でした。（実はこの時、国内の遠距離中波放送が夜になると聞こえていることすら、気が付いていなかったのです） この北京放送受信の感動は大きかったのですが、私の初海外放送受信の感動は、２局目となったモスクワ放送抜きには語れません。 特徴的なＩＳのあと、「こちらはモスクワ放送局です」という独特のエコーを伴ったようなアナウンス。そして開始音楽。さっそく地図帳を出してきて、モスクワの位置を確かめ、その距離感に、わくわくする気持ちを抑えることが出来ませんでした。（実際はハバロフスクあたりからの中継波でしたので、むしろ北京放送より近場の電波だったかもしれませんが）内容的には、北京放送以上に面白みの無い放送だったのですが、１セット３０分で繰り返されるこの海外放送は、北京放送とあわせて、すっかり夜の楽しみになっていました。 この２局を受信した時の感動は、そのまま短波放送受信へとはつながりませんでしたが、やはり私のＢＣＬライフの第一歩ということで忘れることは出来ません。（ちなみにプロフィールに書いたＢＣＬ歴はこの時の経験を含んでいません） ＢＣＬライフのスタートとなった１局 　１９７５年の年末でした。たまたま手にしたマンガ雑誌に、海外日本語放送の特集が掲載されているのを見つけました。当時はＢＣＬブーム全盛の頃だったはずですが、ラジオとは縁の無い生活をしていたせいか、そこで初めてＢＣＬブームというものの存在と、聞いたこともない日本語放送が多数存在していることを知り、非常に興味をひかれました。 帰宅してから家にあった短波ラジオを引っ張り出し、さっそく電源を入れてダイヤルを廻してみました。時間は１９時前だったでしょうか。そこで流れてきたのはオルゴールのような澄んだ音色の音楽。「何だろう．．．？」と聞き続けると、１９時の時報。そして鐘の音と英語のアナウンスの後、妙な鳥の声と日本語アナウンス。そうラジオ・オーストラリアの日本語放送だったのです。「こちらはラジオ・オーストラリア、ＡＢＣの日本語放送です。．．．本日のメルボルンは快晴で．．．」というような内容でしたが、その情景を思い浮かべながら、放送に聞き入りました。そして最後に「カンガルー・ジョッキー」。独特のテーマソングとともに西里扶甬子さんのディスクジョッキーが冴えわたっていました。（当時はオーストラリアの放送を受信した感動が先立って、そこまで余裕は無かったのですが） あっという間の１時間でした。この偶然に受信した局が私にとって生涯忘れられない思い出の１局となったのです。 ．．．ところでなぜ「偶然」に、広大な短波帯でラジオ・オーストラリアを受信できたのかと思われる方もあるかもしれませんので、一応補足しておきますが、家にあった短波ラジオというのは、親が株式市況を聞くために購入していた日本短波放送専用機だったのです。オーストラリアが受信できたのは、たまたま第二放送の周波数（９７６０ｋＨｚ）が一致していたことが原因でした。 その後、このラジオが日本短波放送しか受信できないことを知り、別の短波ラジオを入手し、ＢＣＬを始めることになりました。 以上、放送受信で味わった２つの感動を書かせて頂きました。これ以降も何度か感動は味わっていますが、それはまた別の機会にでもご紹介したいと思います。初めての海外放送が北京放送で、ＢＣＬライフの始まりがラジオ･オーストラリアというのも、あまりにも平凡ではありますが、それでも私にとっては、大事な思い出です。

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